TSエンジンを解剖する


以前に私の主治医の工場で、75TSのエンジンをオーバーホールをすることがあり、ちょうど見学することができたので写真を撮ってきました。TSエンジンの中をここまで詳しく撮った写真は他で見たことがないので、皆さんのいい資料になると思います。


まずはヘッドを撤去したあとのブロック部分。2気筒分のライナーとピストンは外してあります。皆さんご存じの通り、ウエットライナー故にウオータージャケット内は錆が浮いていて、一部ヘドロ化しています。
多かれ少なかれどうしても冷却水の中の錆は避けられない部分ですが、こまめ(1年ごとくらい)に冷却水を変えたり、LLCの濃度を高めに保つ(LLC:水=4:6くらい)ことで、錆をある程度抑えることができます。

この程度の錆ではさほど気にする事はないとのことですが、組み直すにあたっては一通り洗浄してから組み直しています。


上手く撮れませんでしたが、同じエンジンを下から覗いたところです。オイルポンプは外してあります。
何度かクランクケース内を覗いたことがありますが、常にオイルに浸かっているせいか、黄金色に変色しています。こうしてみると、ブロックには鬆が少なく、金がなかった時代のアルファでも、重要な基幹部分に如何に予算を振り分けていたかがよくわかります。

この写真を見ればよくわかりますが、実は主治医の工場ではよっぽどの場合(クランクを外す必要があるときとか、降ろした方が楽な付帯作業がある場合など)でない限りは、エンジンは載せたままオーバーホールしてしまいます。それだけ手間が省けますから、経験のなせる業ですね。


ピストンです。従来のアルファのピストンは圧縮比を上げるためにピストン天面が山のように盛り上がっていますが、あの形状ではノッキングが避けられませんし、ピンハイト(ピストン天面からピストンピンの中心までの距離)が高いとピストンが首を振りやすくなってしまうので高回転に向きません。
それを避けるためにGTAコルサではバルブ挟み角を減らしてピストン天面をなるべく平らにする(ピンハイトを低くできる)ことで、構造的にノッキングを防ぎつつ高圧縮を確保して、なおかつ高回転に向くように改良しました。
75のTSエンジンも基本的には同じ考えです。左の写真のようにピストン天面はほぼフラット。従来のピストンと比べれば形状は全く異なります。基本的にはかつてのGTAコルサ同様のポテンシャルを持つエンジンですから、これをチューニングすればさぞかし面白いエンジンができるんでしょうね。



燃焼室です。この角度から見ると、従来のエンジンの燃焼室との違いがよくわかると思います。バルブ挟み角が狭いがために燃焼室も小さく、よってフラットなピストンでも高い圧縮比(75TSで10:1)を確保できています。
また、右の写真をよく見ると、このエンジンが如何に攻めて作ったエンジンかがよくわかります。ヘッドの面(ガスケットが付く面)とバルブの笠の縁の隙間がほとんどありません。普通のエンジンならば、耐久性やヘッドを面研する余裕代を残すので1ミリ前後の隙間があるのですが、それがこのエンジンにはありません。過去に面研などなにもしたことがないのに、このクリアランスは異常です(笑)
アルファの技術者がこのエンジンにどれだけ情熱を注いで作ったがよくわかります。


こうして75TSのエンジンを解剖してみて、このエンジンは2バルブDOHCの4気筒エンジンの中では史上最強のポテンシャルを持ってるんじゃないかと思いました。イタリアではこのエンジンを16V化してF3に載せていたそうで、もし当時アルファがもっと元気でフィアットグループに入らなかったら、ひょっとしたらTS16Vは75TSのエンジンがベースになっていたかもしれませんね。


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